
結婚祝いの「のし」には、守るべき明確なルールがあります。水引は「結び切り」、表書きは「寿」または「御結婚御祝」、名前は濃墨で楷書――この3点を押さえれば、贈り物の格式が整います。蝶結びの水引や薄墨は、結婚祝いでは使用してはいけません。
相場・プレゼント選び・お返しなど結婚祝いの全体像は結婚祝いの完全ガイドでまとめて確認できます。
のし・水引の基本ルール(結婚祝い専用)
結婚祝いには「結び切り」の水引を選びます。結び切りは一度結んだらほどけない結び方で、「一生に一度きり」の慶事にのみ使う作法です1。
選ぶべき水引の種類:
- 結び切り(むすびきり) ― 最も一般的。紅白10本が正式、5本でも可
- あわじ結び(あわびむすび) ― 結び切りの変形。よりかしこまった印象。慶事・弔事どちらにも使えるが、結婚祝いでは紅白を選ぶ
絶対に使ってはいけない水引:
- 蝶結び(ちょうむすび) ― 何度でも結び直せる=「何度あっても良い」お祝いに使う。出産・入学など繰り返しの慶事向け。結婚祝いには不適切1
水引の色は、結婚祝いの場合は**紅白(または金銀)**が基本です。黒白・黄白の水引は不祝儀用のため、混同しないよう注意してください。
のし(熨斗)とは何か――歴史と現代の使われ方
「のし(熨斗)」はもともと、アワビを薄く伸ばして乾燥させた「熨斗鮑(のしあわび)」をお祝いの品に添えた慣習に由来します。伊勢神宮では現在も伝統的なアワビの加工が続けられており、2004年に無形民俗文化財に指定されています2。
現代では、のし鮑を模した紙(折りのし)または印刷されたのし紙を使います。のし紙とは、水引とのしを印刷した掛け紙のことで、百貨店やギフトショップで「のしかけ」をお願いすると対応してもらえます。
のし(熨斗)を使わない場合:
- 肉・魚など生もの(もともとのしあわびは「生もの」の代わりに使われたため、二重に使わない)
- 弔事・見舞い全般
結婚祝いには必ずのし付きの熨斗紙またはご祝儀袋を使います。
表書き(おもてがき)の正しい書き方
表書きは、のし紙の水引の上側中央に書く贈り物の目的を示す言葉です。結婚祝いに使える表書きは次のとおりです。
| 表書き | 読み方 | 適した場面 |
|---|---|---|
| 寿 | ことぶき | 最も汎用的。結婚祝い全般 |
| 御結婚御祝 | ごけっこんおいわい | 丁寧に祝意を示したいとき |
| 御祝 | おいわい | シンプルかつ格式ある表現 |
| 寿福 | じゅふく | やや古風・格式重視の場合 |
薄墨は絶対に使わない 薄墨は香典・法事など不祝儀専用の慣習です。結婚祝いは濃墨(こいすみ)、つまり通常の黒いインクや筆ペンで書きます。
表書きは楷書で丁寧に。筆ペンを使う場合は先端が細すぎない中字タイプが読みやすくなります。
名前・連名の書き方(水引の下)
贈り主の名前は水引の下側中央に書きます。個人・夫婦・グループによって書き方が異なります。
| 贈り主の人数 | 書き方 |
|---|---|
| 1人 | フルネームを中央に |
| 夫婦(連名) | 夫の姓名を右に、妻の名を左に並べて |
| 2〜3人 | 右から格上の順に並べて記載 |
| 4〜5人以上 | 「〇〇一同」とし、別紙に全員の名前を書いて中袋に同封 |
| 会社・部署 | 「○○株式会社 ○○部一同」など、会社名と部署名を記載 |
名前はフルネームで書くのが基本です。苗字だけ、または名前だけはマナー上避けます。
金額・中袋の書き方
ご祝儀袋(金封)を使う場合、外袋(のし袋)と中袋(内袋)は分けて書きます。
中袋の書き方:
- 表面中央:金額を縦書きで記載。「金〇〇円也」の形式
- 裏面左下:住所・氏名を縦書きで記載
金額の書き方(旧字体が正式):
| 算用数字 | 正式な漢数字(旧字体) |
|---|---|
| 1万円 | 金壱萬円也 |
| 3万円 | 金参萬円也 |
| 5万円 | 金伍萬円也 |
| 10万円 | 金拾萬円也 |
近年は通常の漢数字「一・三・五・十」でも許容されていますが、冠婚葬祭では旧字体の使用が格式の証です。関係別の適切な金額については結婚祝いの完全ガイドをご参照ください。
お札の入れ方:
- 新札(ピン札)を使う。事前に銀行の窓口または両替機で用意する
- 肖像画が表・上になるよう向きをそろえて入れる
- 複数枚は同じ向きに重ねる
内のし・外のしの使い分け
「内のし」と「外のし」は、のし紙をかけるタイミングの違いで区別します3。
| 方法 | のし紙の位置 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 外のし | 包装紙の外側にかける | 直接手渡しする場合(披露宴・訪問) |
| 内のし | 品物に直接かけ、その上を包装 | 郵送・宅配で贈る場合 |
結婚式・披露宴当日に会場で直接渡す場合は外のしが基本。配送の場合は内のしを選ぶと、包装紙が破れてものし紙が傷まずに届きます。
百貨店や通販でギフトを手配するときは、注文時に「内のし」か「外のし」を選択するオプションがあります。
ご祝儀袋と熨斗紙――どちらを使う?
現金を贈る場合はご祝儀袋(金封)を使います。百貨店の文具売り場や100円ショップでも購入できますが、包む金額に合ったグレードのものを選ぶのがマナーです。
| 贈る金額の目安 | ご祝儀袋のグレード |
|---|---|
| 〜1万円 | シンプルな紙製(水引印刷タイプ) |
| 1〜5万円 | 正式な組み紐の水引付き |
| 5万〜10万円以上 | 豪華な飾り付きの高級ご祝儀袋 |
現物(品物)を贈る場合は熨斗紙(のし紙)を品物にかけます。デパートや専門店では「のしかけ」「外のし」「内のし」と依頼するだけで対応してもらえます。
品物選びに迷ったときはタブーとなる品物をまとめた贈ってはいけないものガイドも参考にしてください。
マナー上の注意点
結婚祝いのマナーでよくある失敗をまとめました。
- 蝶結びの水引を使う ― 「何度もあっていい」という意味になり、結婚祝いには不適切
- 薄墨で書く ― 弔事専用のため厳禁
- 4・6・9という数の水引本数を使う ― 死・無・苦を連想させる忌み数
- 連名で格下の人を右に書く ― 右が上位。目上の人を右から記載する
- 切手類・ハンカチ・包丁を品物として贈る ― マナー上タブーとされるアイテム
なお、結婚祝いとして贈る現金や品物は、社会通念上相当な金額であれば贈与税の課税対象外となっています(国税庁 No.4405)4。
ご祝儀の渡し方タイミング
のし袋の準備ができたら、渡すタイミングにも注意しましょう。ご祝儀の渡し方やマナーについては、ご祝儀(goshugi)のガイドで詳しく解説しています。また、一緒にメッセージカードを添えたい場合はお祝いメッセージの書き方も参考にしてください。
まとめ:結婚祝いのし・封筒チェックリスト
結婚祝いを贈る前に、以下の項目を確認してください。
- 水引は「結び切り」または「あわじ結び」(紅白)
- 蝶結びを使っていないか
- 表書きは「寿」または「御結婚御祝」
- 薄墨ではなく濃墨で書いた
- 名前はフルネームで楷書
- 連名の場合、右から格上の順に並べた
- 中袋に金額(旧字体漢数字)と住所・氏名を書いた
- 新札を向きをそろえて封入した
- 直接渡す場合は外のし、郵送は内のし
- 袱紗(ふくさ)に入れて持参する
準備が整ったら、結婚祝いのお返し・内祝いのマナーもあわせてご確認ください。受け取った側のお返しルールも把握しておくと、双方にとってスムーズな贈り物のやりとりができます。
出典・参考文献
Footnotes
-
リングベル ギフトコンシェルジュ, のし・表書きマナー, 2025. https://www.ringbell.co.jp/giftconcierge/manner/noshi ↩ ↩2
-
ウィキペディア日本語版, 熨斗, 最終更新2025. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%A8%E6%96%97 ↩
-
ウィキペディア日本語版, 熨斗紙(内のし・外のし), 最終更新2025. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%A8%E6%96%97%E7%B4%99 ↩
-
国税庁, No.4405 贈与税がかからない場合, 令和7年4月1日現在. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm ↩