
婚姻届の提出は、ふたりが法律上の夫婦になる唯一の手続きです。受理された日が入籍日となり、その瞬間から相続権・社会保険・税制上の配偶者控除など、多くの法的権利が発生します。
書類の不備があると受理されず、役所から連絡が来て再提出が必要になります。事前確認リストを使い、1回で受理されるように準備しましょう。
「入籍」と「婚姻届提出」は厳密には別の手続き
日常会話で「入籍する」という表現はよく使われますが、法律上は正確ではありません1。
**「入籍」**とは、既に存在する戸籍に入ることを指します。たとえば子が親の戸籍に入る場合などです。一方、婚姻届を提出すると、ふたりは(原則として)それぞれの戸籍から抜け、新たな戸籍を作ります。これは入籍ではなく「分籍」と「新戸籍の創設」に近い行為です。
とはいえ、「入籍」という言葉は慣習的に「婚姻届を出して夫婦になること」を指す表現として社会に定着しています。この記事でも以降は一般的な意味でふたつの言葉を使います。
婚姻届の提出に必要なもの
提出前に以下をすべて揃えてください。
必要書類チェックリスト
| 書類 | 詳細 | 備考 |
|---|---|---|
| 婚姻届(所定様式) | 役所の窓口または自治体HPからダウンロード | A3横サイズが一般的 |
| 戸籍謄本(全部事項証明) | 本籍地の市区町村が発行するもの | 本籍地の役所へ提出する場合は不要 |
| 本人確認書類 | ふたりそれぞれのマイナンバーカード・運転免許証など | 写真付きのもの |
| 証人2名の署名・押印 | 18歳以上であれば誰でも可 | 直筆署名が必要 |
証人について: 18歳以上であれば、親族でなくても構いません。友人・職場の同僚・兄弟姉妹など誰でも証人になれます。外国籍の方も可能です1。
外国籍パートナーがいる場合: 相手国の婚姻要件具備証明書・国籍証明書・出生証明書と日本語訳が追加で必要です。駐日大使館で事前に確認しましょう。
婚姻届の正しい書き方
婚姻届の各欄で迷う人が多い箇所を解説します。
氏名・生年月日
戸籍に記載されている漢字で正確に記入します。結婚後の氏(苗字)は夫婦どちらの姓を選ぶかを記入欄で選択します。法律上、ふたりのどちらの姓を選んでも構いません。
本籍・新本籍
本籍は日本国内であれば、実際に住んでいない場所でも設定できます。新本籍として「どちらかの実家」「ふたりが住む現住所」「縁の深い場所」などが選ばれます。迷う場合は住所と同じ場所にすると、戸籍を取り寄せる際に便利です。
証人欄
証人2名がそれぞれ、氏名・生年月日・住所・本籍を直筆で記入します。押印は廃止された自治体もありますが、念のため確認しましょう。証人に遠方の人を頼む場合は、先に証人欄だけ記入・署名してもらい、後で残りを記入する方法も使えます。
記入は鉛筆・消えるペン禁止
正式な公文書のため、消えないボールペンまたは万年筆で記入します。修正液は使えません。間違えた場合は二重線で消して訂正印を押すか、新しい用紙に書き直します。
婚姻届の提出先と受理されるまでの流れ
どこへ提出するか
婚姻届は以下のいずれかへ提出できます1。
- どちらかの本籍地の市区町村役所
- どちらかの現住所地の市区町村役所
- 旅行先など、その日いる場所の市区町村役所(一時的滞在地)
- 海外に滞在中の場合は、在外日本公館(大使館・領事館)
どこで提出しても法的効力は同じです。ただし本籍地以外での提出では、戸籍謄本が必要になります。
24時間提出できる
役所の窓口が閉まっている夜間・休日でも、時間外受付窓口(宿直)で婚姻届を受け付けています1。受理日は提出した日付になるため、記念日(例:誕生日・大晦日・特定の日)に合わせて提出したい場合は時間外提出を活用できます。
ただし時間外提出の場合、書類を確認できる職員がおらず、不備があっても翌営業日以降に連絡が来ます。不備があれば受理が遅れる可能性があるため、可能であれば窓口が開いている時間に提出するのが確実です。
提出から受理まで
担当者が書類を確認し、不備がなければその場で受理されます。受理証明書を発行してもらえる自治体もあります。その後、新しい戸籍が作成されます(通常数日〜2週間程度)。
入籍日の選び方
入籍日=婚姻届が受理された日です。以下のような基準でカップルが選んでいます。
よく選ばれる入籍日
| 選び方 | 具体例 | 理由 |
|---|---|---|
| ふたりの記念日 | 付き合い始めた日・初デートの日 | 毎年忘れず記念日を祝いやすい |
| ふたりの誕生日 | どちらかの誕生日 | プレゼントを兼ねられる |
| 語呂合わせの日 | 11月22日(いい夫婦の日)・1月1日 | 覚えやすい |
| 大安・友引 | 暦の吉日 | 縁起を重視する場合 |
| 結婚式の前日・当日 | 挙式に合わせる | 記録書類の整合性が取れる |
「仏滅に入籍するのは縁起が悪い」という声もありますが、 仏滅は仏教とは無関係の日本独自の六曜によるもので、法的・宗教的な根拠はありません。気にしなければまったく問題ありません。
挙式と入籍のタイミング
入籍と結婚式(挙式・披露宴)の順序に決まりはありません。
- 入籍→結婚式:書類上の手続きを先に済ませてから披露宴を行う。最も一般的なパターン。
- 結婚式→入籍:挙式後に入籍日を設けるカップルも。挙式の当日、もしくは特別な記念日を入籍日にすることが多い。
- 同日:挙式当日に役所への提出も行う場合は、窓口の混雑を避けるため事前に用意しておくとスムーズです。
結婚式の準備と並行して婚姻届の準備を進める方法については、結婚が決まったら行う準備の全体像で流れをまとめています。
入籍後にすること|名義変更・住所変更の優先順位
婚姻届が受理されたあと、以下の手続きが必要になります。
名義変更が必要な主な書類
| 書類・手続き | 窓口 | 目安の期間 |
|---|---|---|
| マイナンバーカードの氏名変更 | 市区町村役所 | 入籍後14日以内(住所変更の場合は義務) |
| 運転免許証の氏名・住所変更 | 警察署・運転免許センター | なるべく早めに |
| パスポートの氏名変更 | パスポートセンター | 次の海外渡航前に。既存パスポートは名前シール貼付か新規発行 |
| 健康保険・年金の変更 | 職場または市区町村役所 | 入籍後5日以内(社保)または14日以内(国保) |
| 銀行口座・クレジットカード | 各金融機関 | 残高証明や各種引き落としに影響するため早めに |
| 不動産(賃貸契約) | 管理会社または大家 | 契約者名義の変更届が必要 |
名義変更を効率よく進めるには、まず役所での手続きを終わらせることが先決です。戸籍謄本・住民票が最新の状態になってから、銀行や免許証など各種手続きに進むと書類の取り直しが減ります。
旧姓(旧氏)の使い方
改姓した側が職場で旧姓を使い続ける場合、2019年の制度改正以降は住民票・マイナンバーカードへの旧氏記載が可能になりました。法的な通称として認められており、仕事上の名刺や書類でも広く使えます。
婚姻届にありがちな不備とその防止策
不備があると「書類を差し戻す」か「後日連絡が来る」かのいずれかになります。時間外提出の場合は後者になるため、入籍日を確実にするには事前確認が欠かせません。
よくある不備
- 証人の記入漏れ・不鮮明な署名 — 証人に記入してもらう前に必要事項を確認する
- 本籍地の書き方が不正確 — 本籍地は「都道府県+市区町村+丁目・番地」まで記載(アパート名・部屋番号は不要)
- 戸籍謄本が古すぎる — 発行から3か月以内のものが求められる場合があります(自治体により異なる)
- 消えるボールペンの使用 — フリクションペン等は使用禁止
- 結婚後の本籍欄が空欄 — 新しい本籍地を必ず記入する
まとめ|婚姻届提出を1回で成功させるための3ステップ
ステップ1:書類をそろえる 必要書類(戸籍謄本・本人確認書類)を早めに準備し、証人候補に事前に依頼しておく。
ステップ2:婚姻届を丁寧に記入する 消えないペンで、戸籍記載通りの文字を使い、証人欄を含めすべての欄を埋める。
ステップ3:窓口が開いている時間に提出する 不備があっても当日修正できる。記念日に合わせて時間外提出をする場合は、提出前に窓口で事前確認してもらうのが確実。
婚姻届の提出が完了したら、次は結婚式の費用や準備の全体計画を立て始めましょう。招待状の準備や両家の結婚挨拶の段取りも並行して進めると、当日まで余裕を持てます。
出典・参考文献
Footnotes
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ウィキペディア日本語版, 婚姻届, 2025年. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A9%9A%E5%A7%BB%E5%B1%8A ↩ ↩2 ↩3 ↩4